2014年10月3日金曜日
●金曜日の川柳〔八橋栄星〕樋口由紀子
樋口由紀子
知り尽す月を縛さん縄もなく
八橋栄星 (やつはし・えいせい) 1904~1976
今夜も月がきれいだ。「月」をこんなふうに捉えるのは川柳ならではと言えそうだ。「縄」は「お縄にする」ということだろう。罪科は当時のお上の判断で決まる。お上の方が間違っていることも多々あったのは歴史的事実である。
「月」はすべてを天空から見ていて、なにもかもお見通しである。お上の都合の悪いことを知られて捕えようとしても、人は縛れても月を縛る縄はないだろうと権力者を揶揄しているのだが、その底には哀しさと怒りがあふれるほどに満ちひろがっている。「月は真実を知っている」のだと思うのは切実な願いであり、光であったのだろう。
八橋栄星は警察に終始目をつけられていた無政府主義者であった。〈鐘楼に星を残して音が消え〉〈蒼原に隠れた蛇の眼が残り〉
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