2015年2月27日金曜日

●金曜日の川柳〔浮千草〕樋口由紀子



樋口由紀子






酔っぱらう全人類を代表し

浮千草 (うき・ちぐさ) 1950~

今日は○○日だからとか、酒の肴にいいのがあったからとか、誰かが来たからとか、酒好きの人は何かと理由をつけて酒を飲みたがる。飲みながらもなんやかやと理屈をつけては杯を重ねる。

それにしても「全人類を代表し」とはうまく言ったものである。ここまで思ったことはないはずだが、ひょっとしたらあるかもしれない。お酒を飲むと気分が大きくなり、偉くなったような気になる。飲めば飲むほど気分もよくなり、なんでもこいと思ってしまう。私がみんなを代表して盃をうけ、みんなの代わりに飲んでいる。だから、酔っぱらってしまった。

「無きにしも非ず」の感覚の、誇張の仕方、ユーモア、おおげさな言いまわしはまさしく川柳である。酔っぱらいをいきいきと描き出した。

〈数学は簡単だった生きるより〉〈いざとなったらおばさんという免罪符〉 『夢をみるところ』(あざみエージェント 2009年刊)所収。

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