2017年3月24日金曜日

●金曜日の川柳〔嶋澤喜八郎〕樋口由紀子



樋口由紀子






ついて来たはずのキリンが見当たらぬ

嶋澤喜八郎 (しまざわ・きはちろう) 1937~

「ふらすこてん」12月句会の兼題「消す」の入選句である。キリンがいなくなった。それもついて来たはずのキリンだという。キリンがついてくる? そもそもキリンは犬などのようについて来ないし、連れて歩く動物でもない。それにあの大きさと長い首。もし、ついて来ていたらわかるはずである。それが見当たらないなんて、どういうことなのかと突っ込みを入れたくなるが、それは野暮である。

句のどこにも力が入っていなくて、何を言っているのかよくわからないがしっかりとあと味を残す。なんともすっとぼけた味を醸し出している。時々はうしろを振り返ってみようかと思う。ひょっとしてキリンがついて来ているかもしれない。「ふらすこてん」(第49号2017年刊)収録。

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