2018年5月11日金曜日

●金曜日の川柳〔浮千草〕樋口由紀子



樋口由紀子






やさしさが犬の姿をして見上げ

浮千草(うき・ちぐさ)1950~

犬の姿をやさしいと言っているのでも、犬がやさしく見上げていると言っているのでもない。「やさしさ」という漠然としてつかみどころのないもの、それでいて大切なものを「犬の姿」で捉えている。普段見慣れている犬の姿がまっさらになり、「やさしさ」とともに立ち上がってくる。

「やさしさ」の感触をこのように表現した句をいままで見たことがない。なにがやさしくて、どうすればやさしいのかなどとそっちの方をつい考えてしまうが、そういうことのなにもかもを更新して、「やさしさ」そのものに働きかけている。世界を見ている作者の目が伝わってくる。「川柳杜人」(2017年刊)収録。

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