2018年5月12日土曜日

【俳誌拝読】『東北若手俳人集 むじな』

【俳誌拝読】
『東北若手俳人集 むじな』(2017年11月23日)


A5判・本文100頁。神野紗希を迎えての座談会「今、東北で俳句を詠むということ」(20頁)ほか、本号掲載作品の句評(外部からの寄稿)、句会紹介etc。

作品Ⅰ〈東北在住作家〉より。

砂へ人うづめ水着の中も砂  浅川芳直

花火まで遠し国道の風ぬるし  岩瀬花恵

抱き合つて蠟燭になる夏の果て  うにがわえりも

八方へ橋吐き出せる朧かな  紆余曲雪

電線の形に雪が落ちて寝坊  及川真梨子

このなかのどれが人喰う向日葵か  工藤玲音

レシートの丸まつてくる晩夏かな  佐々木萌

雲海見るまだ誰も落ちたことのない 佐々木もなみ

蕗の薹殺風景の中に出づ  漣波瑠斗

ラムネから噴き出している 時間、とか  佐藤廉

木犀の匂ひに覚むる居眠りよ  天満森夫

著莪の花降られるまでの立ち話  浜松鯊月

作品Ⅱ〈東北出身作家〉より。

青空は異界の水面冬紅葉  一関なつみ

熱帯魚をエントロピーとして君は  工藤凱門

綿虫や出臍で君は上京す  佐藤のど

とかげ出る社交辞令がぎこちない  佐藤美佳子

殺人を済ませたように隙間風  谷村行海

炎天の電車傾きつつ弧線  千倉由穂

(西原天気・記)



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