樋口由紀子
自転車で来たので自転車で帰る
筒井祥文 (つつい・しょうぶん) 1952~2019
たまに近くの駅まで自転車で行く。帰りも自転車で帰る。そんなときペダルを漕ぎながら、この句を口ずさむ。「で」「で」「で」でつないだリズムが心地いい。
駅でもコンビニでもどこでも自転車で来たなら当然自転車で帰る。ただそれだけのことをためらいも力みもなく書いている。他は一切省略されている。なんでもないことに味があり、しみじみとした気分にさせる。しいては人生を感じさせる、とまで言えば言い過ぎだろうか。どこがいいのかわからないおもしろさがあるのも川柳の特質かもしれない。『座る祥文・立つ祥文』(2019年刊)所収。
●
0 件のコメント:
コメントを投稿