相子智恵
間引かれてより間引菜の名をもらふ 谷口智行
句集『海山』(2024.7 邑書林)所収
大根や蕪などは、最初は隙間なく種を撒くものの、芽が出た後は、風通しと日当たりをよくするために定期的に間引き、大きく育ちそうな株だけを残して育てる。
掲句、言われてみればそのとおりだ。間引かれなかったら大根や蕪に育つはずだったのだから、〈間引菜〉と呼ばれるはずもなかったものである。
間引かれたからこそ、ついた名前が〈間引菜〉。なんと哀れなことだろう。しかし、〈名をもらふ〉というところには諧謔もあって、哀れさと可笑しさが同居した、俳句らしい視点と味わいがある句になっている。
間引かれたからといって捨てられることはなく、お浸しや胡麻和えで美味しくいただく。途中で生育が終わってしまっても、そこでは「間引菜」の名がついた株こそが、堂々たる「主役」なのである。
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