樋口由紀子
はじめから落ちることだけめざす滝
高橋かづき(たかはし・かづき)
「滝」は人生だろうか。「落ちる」という言葉にはあまりいいイメージがない。「落第」「落城」「陥落」「墜落」などなど。しかし、「めざす」には向日性がある。「落ちること」を「めざす」のであれば、飛び込み競技のように、どれだけ自然に落下して、波をたてないか。「落ちる」ことに意義を見出そうとしているのかもしれない。
てっぺんから一気に勢いよくまっすぐに落下する滝は句材によく使われる。俳句では<滝の上の水現れて落ちにけり 後藤夜半>や川柳では<なんぼでもあるぞと滝の水は落ち 前田伍健>などがある。「落ちることだけめざす」のは諦念、宿命だろうか。それとも強さを試されているのだろうか。(「垂人」46号 2024年刊)収録。
●
0 件のコメント:
コメントを投稿