魔法にもせよ不思議成る隠れ蓑 打越
眠る人なき十七夜待 前句
師恩しる枕に替る薬鍋 付句(通算55句目)
『西鶴独吟百韻自註絵巻』(1692年頃)
【付句】三ノ折・裏5句目。 雑。 薬鍋(くすりなべ)=煎薬を煎じる鍋。
【句意】師恩を知る(門人たちが、病床の師匠の)枕辺で代わる代わる薬鍋の薬を煎じている。
【付け・転じ】前句の「十七夜待」に師の平癒祈願を、「眠る人なき」に徹夜の看病をあしらった。
【自註】何の先達によらず、爰(こゝ)は*病家にして付けよせたり。「師恩」と出だしけるは、其の弟子、年月の恩をわすれず、跡や枕に付添ひて昼夜心をつくし、壱人も眠る事なく、諸仏諸神をいのりて、心ざしの**影待、又は立願(りふぐわん)の***七日まゐり。替り/”\に薬をせんじ、今一たびの命を願ふまことある所を付けける。
*病家(びやうか)=病室。 **影待(かげまち)=「月待」に同じ。 ***七日まゐり=社寺へ一日に七度、七日間お参りし、祈願すること。
【意訳】どのジャンルの師匠に限らず、ここは(師匠の)病室を其の場として付けよせた。「師恩」と上五においたのは、その弟子たちが年来の恩を忘れず、病床のその周囲に侍って昼夜心をつくし、誰も眠ることなく、諸々の神仏に祈って、厚意による月待・日待、または平癒祈願の七日参り。皆で代わる代わる薬を煎じ、今一たびの延命を願う誠意ある場面を付けたのである。
【三工程】
(前句)眠る人なき十七夜待
先達の病家に弟子の祈りをり 〔見込〕
↓
年月の恩に病の師を囲み 〔趣向〕
↓
師恩しる枕に替る薬鍋 〔句作〕
前句の「眠る人なき」を*徹夜の看病と見て、「十七夜待」に師の平癒祈願を思いなし〔見込〕、〈弟子達はどのような心情か〉と問うて、日ごろの恩を忘れていないとし〔趣向〕、代わる代わるに煎じる「薬鍋」という素材を詠みこんだ〔句作〕。
【句意】師恩を知る(門人たちが、病床の師匠の)枕辺で代わる代わる薬鍋の薬を煎じている。
【付け・転じ】前句の「十七夜待」に師の平癒祈願を、「眠る人なき」に徹夜の看病をあしらった。
【自註】何の先達によらず、爰(こゝ)は*病家にして付けよせたり。「師恩」と出だしけるは、其の弟子、年月の恩をわすれず、跡や枕に付添ひて昼夜心をつくし、壱人も眠る事なく、諸仏諸神をいのりて、心ざしの**影待、又は立願(りふぐわん)の***七日まゐり。替り/”\に薬をせんじ、今一たびの命を願ふまことある所を付けける。
*病家(びやうか)=病室。 **影待(かげまち)=「月待」に同じ。 ***七日まゐり=社寺へ一日に七度、七日間お参りし、祈願すること。
【意訳】どのジャンルの師匠に限らず、ここは(師匠の)病室を其の場として付けよせた。「師恩」と上五においたのは、その弟子たちが年来の恩を忘れず、病床のその周囲に侍って昼夜心をつくし、誰も眠ることなく、諸々の神仏に祈って、厚意による月待・日待、または平癒祈願の七日参り。皆で代わる代わる薬を煎じ、今一たびの延命を願う誠意ある場面を付けたのである。
【三工程】
(前句)眠る人なき十七夜待
先達の病家に弟子の祈りをり 〔見込〕
↓
年月の恩に病の師を囲み 〔趣向〕
↓
師恩しる枕に替る薬鍋 〔句作〕
前句の「眠る人なき」を*徹夜の看病と見て、「十七夜待」に師の平癒祈願を思いなし〔見込〕、〈弟子達はどのような心情か〉と問うて、日ごろの恩を忘れていないとし〔趣向〕、代わる代わるに煎じる「薬鍋」という素材を詠みこんだ〔句作〕。
*檜谷昭彦氏は〈西鶴の死に後れること一年の元禄七年十月十一日の晩、翌日の死を前に松尾芭蕉は弟子丈艸の詠んだ、「うづくまる薬の下(もと)の寒さかな」なる句を「出来(でかし)たり」と賞めた〉と記したうえで、この〈師恩しる枕に替る薬鍋〉に言及し、〈そういう状景を連想させる句作りであり、同趣旨の句柄でもある〉と評した(慶應義塾大学藝文学会「藝文研究」50号所収「西鶴晩年の動向」1986年)
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「確かわしより二つほど若かったはずやけど、わしが死んだ翌年、もう亡うなったんかい」
はい。まさに同時代人でしたね、お二人は。
「時代は同じでもな、いき方が真逆やったな」
たしかに。
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