相子智恵
舌の上に黄金週間の飴が 彌榮浩樹
句集『銃爪蜂蜜 トリガー・ハニー』(2025.3 ふらんす堂)所収
気づいたら、来週からもうゴールデンウィークであった。
掲句、「舌の上に飴が」は些事中の些事であり、「舌の上に飴があるのは当たり前じゃん」の一言で鑑賞が終わってしまうくらい、ある意味、清々しいほどの「驚きのなさ」である。
そこに唐突に割り込んだ〈黄金週間の〉。この季語が、一句にぬけぬけとした面白味を与えている。何でもない飴が、光り輝く宝物のように思えるではないか。しかも「黄金週間」という張りぼてのような薄っぺらなネーミングが、妙に「舌の上の飴」という庶民的な些事と合っているのだ。
〈飴が〉の言いさしも効果的だ。気づいたら黄金週間に突入していて、でも自分は変わらず飴を舐めるような日常。
そんな時、わざと恭しい感じで「(おお、我が)舌の上に黄金週間の飴が」と言ってみた…その輝かしい虚しさ。自嘲的な雰囲気があるところが面白い。
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