2026年1月16日金曜日

金曜日の川柳〔岸本水府〕湊圭伍



湊圭伍

※樋口由紀子さんオヤスミにつき代打。



右の灯が左になつて船が着き  岸本水府

近代川柳の六大家のひとりである水府の昭和23年(57歳)の句。

「時間性の抹殺」(山本健吉)が俳句の本質かどうかはさておき、俳句と比べて川柳では、描かれる世界において、また言葉の運びにおいても、時間性が活かされ、また、強調されることが多いようだ。

掲句、夜の川をやってきた船が船着き場手前でのんびりと向きを変え、ゆったりと着岸する、そのあいだの間延びした時間の流れこそが句の内実と言い切ってよい。あるいは、この光景を思考はからっぽに、固定カメラのように映し出し続けている視線の無為を味わう、とも言えようか。

さらには、「右の灯が左に」から上の光景を読み解くまでの読者の頭のなかでの遅延も、この句から受ける時間感覚に寄与しているようにさえ思われる。

『岸本水府川柳集』(有文堂、昭和23年)より。

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