
西原天気
曇天がかたむくときのトム・ウェイツ 瀧村小奈生
何かがこぼれ落ちてきそうな気もするが、それは雨なんかじゃなくて、《曇天がかたむくとき》には、曇天のかけらとか、曇天なりの日のひかりとか、物音とか、歌とか。
思い出すのは、多摩川べりを下ってガス橋が見え始めた頃、友だちからもらったカセットテープからトム・ウェイツの歌。この曲だ。
胸がいっぱいになって、すると、その「ガス橋」という名前までもが、とてつもなく感傷的で。
ああ、それと、カセットテープのちょっと曇った音も相俟って、そのときすこぶる、曇天的かたむき、トム・ウェイツ的かたむき、なのだった。
掲句は瀧村小奈生句集『留守にしてります。』(2024年/左右社)より。
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