樋口由紀子
総領は尺八を吹くツラに出来
可笑
尺八を吹くにはかなり技術がいりそうである。首を縦にふったり、あごの角度を変えたり、息を吹き込んでいく姿はときには滑稽のように見えてしまうものだが、尺八を吹く人は総じて意外なほどさまになっている。
「総領は尺八を吹く」はありそう、「総領は尺八を吹くツラ」はなるほど似合うだろう、が、なんてことはない。しかし、掲句の見事さは「ツラに出来」と言い切った見立てと批評眼にある。それによって一句は劇的に変化した。そうか、生まれながらにそういう顔に出来ていたのかといたく納得した。幸か不幸か、自分はその顔に生まれてこなかった。
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