2016年7月11日月曜日

●月曜日の一句〔宇野恭子〕相子智恵



相子智恵






月涼し風船かづらふやしては  宇野恭子

句集『樹の花』(2016.07 ふらんす堂)より

風船かづらは夏になると時々、フェンスや窓辺で旺盛に育っている様子を見かける。ゴーヤなどと同じで、いわゆる「緑のカーテン」になるようだ。鬼灯に似た、ころんとした丸い形で、細い蔓をしゅるしゅると巻き付けて伸びる。

夏は、濃い緑色の葉の植物を見ることが多いだけに、薄緑色の風船かづらは、そこだけふわっと新緑のような柔らかさがあって、ほっとするような涼しさがある。

掲句、昼の暑さからようやく解放された夜空に、白く涼しげな月が浮かんでいる。そして月の光が作用して、ぽん、ぽん、ぽんと風船かづらが音を立てて殖えていくようだ。月光を反射し、ぼんやり光る丸い風船かづらは、まるで月の子どもたちのようである。

ロマンティックで、SFっぽくもある美しい句。

0 件のコメント: