2016年8月5日金曜日

●金曜日の川柳〔瀧村小奈生〕樋口由紀子



樋口由紀子






捨てられた靴のサイズは二十八

瀧村小奈生 (たきむら・こなお)

意外なところに意外なものがあれば驚きである。「捨てられた」だからゴミ集積所だろうか。たぶん履きつぶされている。使い古された靴ほど惨めなものはない。新品のときとはまったく違った様相になる。が、作者がびっくりしたのはそのサイズ。大きい。どんな人がこの靴を履いていたのかと思ったのだろう。

私事だが、息子の靴のサイズは二十八。それも小学六年の時から。だから、玄関に脱ぎ捨てられる(きちんと揃えない)でっかい靴に長年ほとほとうんざりしている。そして、二十八の靴を捨て続けてきた。びっくりさせていたのだ。

今ではわりとどこでも二十八の靴は買えるが、当時は、それも子ども用の、たとえば上履きなどはほとんどなく、探すのに苦労した。掲句を読んで、そんなことを思い出した。「川柳カード」第12号(2016年刊)収録。

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