2016年8月26日金曜日

●金曜日の川柳〔川合大祐〕樋口由紀子



樋口由紀子






中八がそんなに憎いかさあ殺せ

川合大祐 (かわい・だいすけ) 1974~

川柳では(俳句もそうかもしれないが)中八を嫌う。入門書やカルチャー教室でまず指摘されるのは中八。私だって、中八を注意されたことも注意したこともある。それに対して「さあ殺せ」と啖呵を切る戦略性、まいりました。

「そんな憎いか」なら中七。「そんなに」の「に」を入れてちゃんと(?)中八に仕立てている。「に」が入って、中八にしたことによって語調に一気さが出て、迫力が増した。かなりの巧者である。やんちゃなふうに見せて、しっかりと意義を唱え本質を掴んでいる。

「憎い」「殺せ」が、いや「中八」「そんなに」「さあ」もすべての言葉がいきいきと躍動している。川柳のダンスのようで絵柄と動きが浮かんでくる。

〈ぐびゃら岳じゅじゅべき壁にびゅびゅ挑む〉〈三人で磔刑になるさみし、い〉〈れびしいと云う感情がれびしくて〉〈僕の比喩たとえば君は東大寺〉。どの句もサービス精神旺盛で川柳の可能性を実際に示した。『スロー・リバー』(2016年刊 あざみエージェント)所収。

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