樋口由紀子
尾を少しずらすと初春の陽が当り
北村泰章 (きたむら・たいしょう) 1943~2007
縁側で猫が日向ぼっこしているのだろうか。ほどよく陽の当たる位置で眠っている。陽の動きに合わせて、尾も微妙にずらしている。猫は頭がいい。猫を見習わなくてはと思ったのだろう。
こんなちょっとしたことで陽に当たることができる。自分は一体何に意地を張っているのか。少し妥協すれば、少しだけ歩みよれば、そうすれば、陽も当たる。全身ではなくてもいい、さきっちょの尾をほんの少しずらすだけでいいのだ。どうして、そんな簡単なことにいままで気づかなかったのか。そう思うと心にも陽が当たったようで、心が軽くなってくる。『現代川柳の精鋭たち』(2000年刊 北宋社)所収。
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