樋口由紀子
ほら桃を置けばぐらぐらしなくなる
谷じゃこ (たに・じゃこ)
桃の季節が終わった。また来年のお楽しみである。桃は大好きな果物で、自分の中での価格の基準がクリア―すれば、飛びついて買う。果汁いっぱいで、口当たりもやわらかく、本当に美味しい。少しぐらい嫌なことがあっても、桃を食べると胸のもやもやは消える。
掲句は食べるではなく、置くである。「ほら」で「桃」の触感を伝える。ペーパーウェイトのような扱いだ。確かに桃はある程度の重さがあるからペーパーウェイトの代用はできそうだが、長く置くと熟してくるからたいへんである。一体誰に言っているのか。自分自身だろう。では、どこに置くのか。そもそも桃を置くとぐらぐらしなくなるというのはなになのか。モノではなく、ココロだろう。ぐらぐらさせているものが心配になる。いろいろ考えていくとよけいにややこしくなってきた。やっぱり、桃は置くよりは食べた方がいい。作者は歌人である。「うみの会」
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