浅沼璞
秘伝のけぶり篭むる妙薬 西鶴(六句目)
肝心の軍の指南に利をせめて 仝(七句目)
『独吟百韻自註絵巻』(元禄五・1692年頃)
秘伝のけぶり篭むる妙薬 西鶴(六句目)
肝心の軍の指南に利をせめて 仝(七句目)
『独吟百韻自註絵巻』(元禄五・1692年頃)
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百韻の七句目は月の座ですが、本巻は発句が秋なので脇へ月を引き上げています。よってここは雑を続けます。
意味をとれば、「だいじな兵法の指南書に理を詰めて」という武士目線の付けです。(「利」は「理」の誤記)
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「雨松明(あめだいまつ)」とは豪雨でも消えない松明のことですが、兵法書『楠家伝七巻書』(1682年)にその記述はないらしく、西鶴得意の捏造、なのかもしれません。
「玉薬」は鉄砲・大砲の火薬のことです。
要は前句「秘伝の妙薬」の「薬」という言葉を「火薬」に読み替える「取り成し」付けですね。【注】
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さて自註と最終テキストとの落差を埋める過程を想定してみましょう。
狼煙など秘書に記しし事あまた 〔第1形態=秘書くん〕
↓
肝心の軍の指南に利をせめて 〔最終形態=指南さん〕
前句「けぶり」から雨松明や狼煙などの兵法を連想し、「秘書くん」が生まれたわけです。けれど前句「秘伝」に「秘書くん」は付きすぎなので、「指南さん」へと変態させたという想定です。(これで雨松明や狼煙などの「抜け」にもなります。)
無論それでも「秘伝」に「指南」の付け寄せは物付(詞付)気味でしょう。
狼煙など秘書に記しし事あまた 〔第1形態=秘書くん〕
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肝心の軍の指南に利をせめて 〔最終形態=指南さん〕
前句「けぶり」から雨松明や狼煙などの兵法を連想し、「秘書くん」が生まれたわけです。けれど前句「秘伝」に「秘書くん」は付きすぎなので、「指南さん」へと変態させたという想定です。(これで雨松明や狼煙などの「抜け」にもなります。)
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無論それでも「秘伝」に「指南」の付け寄せは物付(詞付)気味でしょう。
かてて加えて加藤定彦氏は、「妙薬」に「肝心」(肝臓・心臓)という付筋をも指摘し、「物付の気味」を強調しています(『連歌集 俳諧集』小学館)。
「なんや学者はんはシツコイな。眼差しの転じ、いうもんを知らんのかい」
? あの、「眼差しの転じ」って、それ……。
「そうや、こなたも先から使うてる論法やろ。それ、言うたってや」
……では次回「三句目のはなれ」で、それ、言うたります。
「なんや学者はんはシツコイな。眼差しの転じ、いうもんを知らんのかい」
? あの、「眼差しの転じ」って、それ……。
「そうや、こなたも先から使うてる論法やろ。それ、言うたってや」
……では次回「三句目のはなれ」で、それ、言うたります。
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【注】
「取り成し」は言葉の読み替え、「見立て」は句意の読み替えで、二つは表裏一体。(『俳句連句REMIX』46頁)
「取り成し」は言葉の読み替え、「見立て」は句意の読み替えで、二つは表裏一体。(『俳句連句REMIX』46頁)
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