
八上桐子
鍵の音すっぽんぽんのどこからか 平賀胤壽
すっぽんぽんがいい。裸を表す言葉は他にもあるが、この言葉にはどこか無邪気で、滑稽で、少しばかり情けないイメージがある。
なにも身につけず、なにも隠すもののない人。そのまっ裸のどこからか、鍵の音?
人はどれほど無防備な姿になっても、いや無防備だからこそ、最後のさいごまで守りたいものがあるだろう。すべてをさらけ出したように見える人にも、どうしても明け渡せない場所や、誰にも踏み込ませたくない領域があるはずだ。
すっぽんぽんに思わず笑いそうになって、はっとした。介護していた頃の、義父の裸体がふわりと浮かんできたのだ。
奇妙に思えた鍵の音とすっぽんぽんが、ひんやりさびしく響き合った。
『句集 水摩』(いりす 2008年)
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