2010年11月3日水曜日

●誌上句会「福助」・選句一覧(3)

誌上句会「福助」・選句一覧(3)

選句一覧と作者です。句数が多いので、1日1題ずつ、4日間にわたって発表させていただきます。

誤記・漏れ等お気づきのときは、tenki.saibara@gmail.com まで。

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【上or下】  

「上を向いて歩かう」聞こゆそぞろ寒  廣島屋
○風狂子
■選曲が良い(風狂子)
■歌謡曲の幻聴句は類想の山。(るる)
■何故あの曲が全米1位に?(痾窮)

オートバイ事故皿の上の焼秋刀魚  内田董一
■そんなこと言っている場合でなく、救急車を。(るる)
■炎上悲惨な事故。(痾窮)

きよみづにこれは上田の足袋の秋  文香
○廣島屋○知昭
■まるでとってつけたような下五の「秋」には笑ってしまいました。そしてこの句の場合「上田」という名前が外せないような気がしてきました。(廣島屋)
■京の「きよみづ」に落ちているの「上田の足袋」。上田さんの足袋なのか、それとも信州上田の足袋なのか、とにもかくにも深まりゆく京の秋の風情にあふれた一句。(知昭)
■いいリズムなんだけど…(痾窮)

ふぐり来て高さ生まるる橋の上  真冬
○藤幹子
■ふぐりを意識してしまうお年頃ですね。(藤幹子)
■身長を測る器具と相似。<「ふぐり」は睾丸、陰嚢、きんたまの意の古語(hatena)>(痾窮)

ヘアスタイルなぜならば資本主義墓地下  埋図
■なぜだろう、なんとなくわかるようでわからない。(るる)
■読解不能。定型じゃないからではなく、です。(痾窮)
■「なぜならば」って「だって資本主義だから」と続く終わりなき禅問答。(知昭)

やや寒のトイレの蛇口上げをれば  どんぐり
■「トイレの蛇口」が乱暴な省略。(るる)
■若しかしてチン×コ?…私もう極寒。(痾窮)

以下同文ひるすぎ野分現れて  知昭
○るる○廣島屋○鈴木不意
■初五が面白いです。野分による広範囲に渡る被害を描いています。(るる)
■下五「現れて」はひらがなに開いた方が好みですが。(廣島屋)
■何が「以下同文」なのかは知らぬが、午後から野分という関係のなさに不思議な戸惑を覚えた。(鈴木不意)
■「現れて」?人の名前みたい。(痾窮)
■「ひるすぎ野分現れて以下同文」なら「階段を濡らして昼の来てゐたり 攝津幸彦」の本句取りとして頂く。(猫髭)

黄落や兄あちこちに土下座して  小早川忠義
○sono○正則○中塚健太○知昭
■こんな悲しい句は初体験。ほんとうに悲しい。(sono)
■私には兄はいないが、まじめな兄と、やんちゃな弟の姿が見える。(正則)
■肉親のことは心が痛みます。悲しいけどハラハラと涙のような黄落がせめてもの慰めということでしょうか。中七下五は虚構と推察しますが、上五の効果か、物語のように共感できました。(中塚健太)
■「土下座の兄」の姿はこの弟か妹にどう映るのか、ひたすら頭を下げ続けるのが情けないのか、自分たちのせいでと申し訳なく思うのか。「黄落」のわびしさで一句が引き立つ。(知昭)
■黄落というより、木の葉髪になりそう。(るる)
■弟の不始末で。(痾窮)

雅樂の荷解くや返り咲く下に  中村遥
■他の荷物でも成立してしまう句。(るる)
■読み切れない。(痾窮)

銀漢や上水道と下水道  山田露結
○内田董一○埋図○猫髭
■景の大きい、わかりやすい取り合わせ。乱暴なようで意外に繊細、潔さもあります。(内田董一)
■融資を頼む際、誰だって正門から行くバカはいない。誰かを頼んで護衛を前後に配置して、ちゃんと管径を調べた上で、貸し剥がしとかさせん様に手を打つさ。第三のルパンはちとまずったな。(埋図)
■観月時に酔って短冊回しをやると、空を見たら地べたを見ろという取り合わせで遊ぶ奴が必ず出てくる。誰が詠んだか忘れたが「名月や風呂の流るる下水道」というのがあった。「銀漢」は上・下水道の水音が聞こえるようで面白い。(猫髭)
■川崎展宏の「天の川水車は水をあげてこぼす」があれば十分。(るる)
■天の川と水道、そう見ると近すぎる。(痾窮)

行く秋の屋上に出る出口かな  信治
○宮本佳世乃○義知○るる○中塚健太○猫髭
■開放感と、ともにある一人のよろしさ。(宮本佳世乃)
■秋日和や秋晴れだと普通か。白色系の屋上への出口とその中の暗闇が冬。(義知)
■屋外に出られるようで、屋上にしか出られないところが面白いです。季語と合っています。(るる)
■「出る出口」は拙い言い方にも思えますが、平素の口語感覚がこの言い方の唯一無二性(今っぽさ)を支持。秋の空の遠さ、取り残される感覚を味わいました。(中塚健太)
■「天高し」で、屋上の出口に広がる空はやはり秋天だろうと納得する。デパートの屋上の小さな遊園地も見える。秀逸。(猫髭)
■回りくどい言い方。(痾窮)

蛇穴に上下左右がわからない  近恵
■上下は解る筈です。(痾窮)

秋のあまつぶあしたラの下の音  宮本佳世乃
○埋図
■まず音程を確認する。秋の発表会の日程も、確認する。そして今日は雨だが、あしたの天気もさらに確認する。ララ ラララの他にはソラソラ、ミラミラ、ドラドラとかやるだろが。(埋図)
■ソぉ、ですか。(痾窮)

秋の暮灯台下を浸しけり  中塚健太
○痾窮
■「灯台もと暗し」は海の灯台でなく室内の灯りの下らしい。「秋の暮」は一寸重いが。(痾窮)

松茸の誰が上様領収書  痾窮
○沖らくだ○中塚健太○岡本雅哉
■最高です!ドサクサ紛れになんという!こういう人が一人ぐらい職場にいて欲しい。経理担当の呆れた顔が見えるようです。(沖らくだ)
■複数人で誰が支払うか決まっていない場合、すごく複雑微妙な心理の交錯する場となります。まして松茸。思う以上に高かった?(笑)。「誰が上様」に座布団一枚!(中塚健太)
■松茸の(誰が上様)領収書、という構造でしょうか? 「オレが払うよ」、「いやオレが」、と領収書を取り合う姿が微笑ましい。(岡本雅哉)
■川柳。(るる)

上巻読了夜仕事とせる下巻かな  義知
■状況説明、俳句的小細工を!(痾窮)

福助のやうな上司でおでん鍋  天気
○真冬○小早川忠義○小川春休○正則○中村遥
■「上司と」ではなく「上司で」。この「で」のあしらいに惹かれたのです。(真冬)
■これまた頼りなく見える上司です。お辞儀ばかりしているように見えますか、そうですか。たまに折れることもあなたの身を守るために必要な時もあ るのです。お辞儀なんかしないでいられる仕事なら、あなたと一緒にてっちりなどを突付けるくらいになれるのでしょうか。おでんだっていいじゃない ですか。温かいのに変わりは無いわけですし。(小早川忠義)
■おっさんなのにベイビーフェイスでおちょぼ口、いつもにこやかで無口、気の利いたことを言う訳でもないのに場を和やかにしてしまう、そんな福助係長、良いですね! 最初「で」が無造作な感じがして気がなっていたのですが、二読三読するうちに気にならなくなりました。これも福助係長の御利益か。(小川春休)
■会社ではよくあると思う。(正則)
■こんな上司はいいなあ。おでん鍋がぴったりと当てはまる。只、〈で〉が気になった。型に収まり過ぎるかも知れないが〈や〉ですっきり切った方が理屈っぽくなくて私はいいと思うのですが。(中村遥)
■どのように福助に似ているのでしょう。容貌、性格、ご利益?(るる)
■円満な関係のようで、呑むのも上司とではサラリーマンも大変。(痾窮)

上手より吹かれてきたる紅葉かな  鈴木不意
○信治○痾窮
■ぱっと、その場が「舞台」に。(信治)
■ぼろ芝居小屋、桜吹雪のはずが紅葉。(痾窮)
■舞台の紙の紅葉なのか、木々と木々のあいだを舞台と見立てたのか、ふたつの読みが同時に訪れる。いただきたかった句(天気)

上人のすぐには泣かず秋の蝉  知昭
○小川春休
■「すぐには」ということは、泣きやすい人たちが落ち着いてきた頃にほろり、と来る訳ですね。ありがたやありがたや。ただ、「泣く」で「蝉」はちょっと利がつく気もします。もったいなや。(小川春休)
■「鳴かず」じゃないから泣くのは上人?高僧ふ~ん。(痾窮)

上野から下谷界隈まで月夜  sono
○宮本佳世乃○山田露結○沖らくだ○正則○猫髭○恵
■界隈、で成功ですね。(宮本佳世乃)
■「上野から下谷界隈」に月夜を限定しているところがミソ。「界隈」がいい。もちろんその他の場所に月が出ていないわけではない。その夜の作者の行動範囲を言っているのである。(山田露結)
■きれい。イイひととそぞろ歩きたい。(沖らくだ)
■上、下の使い方がいい。(正則)
■江戸の下谷根岸界隈に住んでいた鵬斎・詩仏・五山・南畝・文晁・抱一・米庵らを偲ばせる粋筋の佳句。(猫髭)
■本当はもっと遠くも月夜に決まっているのに、自分の今いるあたりが月夜だというこの狭い世界がいい(恵)
■月夜はその区間以外にも見えるはず。自分が月夜にその区間を歩いたのだとすれば、推敲の余地あり。(るる)
■本人が移動しているわけです。(痾窮)

星月夜見上げて靴の踏める星  るる
■コンバースも★だけど、靴は「月星」と。(痾窮)

天高しカリカリ揚る上天丼  風族
○どんぐり○痾窮○中村遥
■美味しそう(どんぐり)
■食欲の秋。(痾窮)
■美味しそう。上天丼ですからね。大気が澄み空が高く感じられる趣の季語〈天高し〉との取り合わせが上手い。只、〈天高し〉〈天丼〉の〈天〉、〈天高し〉の高いと〈上天丼〉の値段が高いは意識的?偶然? 偶然であってほしい。また、〈カリカリ〉は常套かと。(中村遥)

年下の上司に苦言そぞろ寒  正則
○風族○義知
■そぞろ寒に実感があります。(風族)
■他人事じゃないなと。(義知)
■わかる内容だが、こういう寒さは超季。「そぞろ寒」の本意と違う。(るる)
■季語にくっ付き過ぎかな。(痾窮)

箱根路を下に下にと鰯雲  猫髭
○小早川忠義
■鰯雲が、毛槍に見えたのでしょう。鰯雲を見て横に逸れて平伏するということは無いけれど、ロマンチックに感じましたので。(小早川忠義)
■下り坂で下を向いていたら、鰯雲は見えない。(るる)
■鰯雲を大名行列と見る。箱根があるから突飛でも無い。(痾窮)

福助が下に見てゐるおでん屋内  小川春休
■風景として解るから「内」は不要、「下に見ている」は一寸変。(痾窮)

蓑虫や下校下駄箱下衆な唄  藤幹子
○どんぐり○風狂子
■下駄箱の埃と汗の匂いも(どんぐり)
■全句中、最も気持ちのイイ韻律(風狂子)
■蓑虫で意味性が強くなってしまったような。(宮本佳世乃)
■楽しい句ですが、季語が付き過ぎかも。(るる)
■ゲスな唄に蓑虫は聴きたくない聴きたくない、と。(痾窮)

夜学子や下敷きおけば消える色  沖らくだ
○風族○山田露結○鈴木不意
■夜学子まで消えてしまいそう。(風族)
■半透明のプラスティック製の下敷きだろうか。「下敷きおけば消える色」という小さな発見が夜学に励む静かな景を映し出している。
■書かれた文字の色、あるいは印刷してある大事な部分の色は、同じ色の透ける下敷きをあてると消えてしまう。大事な事って思い出せなかったり、見失うんだよなあと実感。(鈴木不意)
■「色の消え」や「色消えて」、「文字の消え」の方が広がりがあったかもしれません。ああ、あの頃が懐かしい。(小早川忠義)
■そういうからくり勉強具が有りました。(痾窮)

綺羅星の上から目線が癪くしゃみ  岡本雅哉
○sono
■「くしゃみ」がよいです。リアルです。「癪くしゃみ」の語呂とリズムもよいです。(sono)
■「上から目線」は使って欲しく無い日本語。(痾窮)

  

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