〔暮らしの歳時記〕
初しぐれ
山田露結
「ゴムしてるのにイク前に抜くの?」
ユカリが少し不思議そうな顔で言った。
「え?だって、万が一ってこともあるだろ。」
オレがそう答えるとユカリは
「ふーん、優しいんだ。」
そう言って、ティッシュペーパーを三枚ほど抜いてオレに渡した。
「何だよそれ。どういう意味?」
オレは苦笑いしながら言った。
「だって、私のこと人間扱いしてくれてるんだって思って。」
「だから、何だよそれ。」
ユカリは何も言わずに俺の腕にそっと抱きついてきた。
「どうしたの?」
「ううん、うれしいの。」
そのとき、ユカリは少し涙ぐんでいるようにも思えた。
外は雨らしく、かすかな雨音を窓越しに聞いていた。
初しぐれ今日菴のぬるゝほど 高井几董
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2010年11月18日木曜日
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