2017年2月3日金曜日

●金曜日の川柳〔清水美江〕樋口由紀子



樋口由紀子






噛んであるから鉛筆は君のもの

清水美江 (しみず・びこう) 1894~1978

歯型のついた鉛筆を子どものころはよく目にした。今はあまり見かけない。私自身も勉強がしたくないとき、問題が解けないとき、なんとなくいらいらしたときなどに鉛筆を噛んでいたようなおぼえがある。

君のものなんていくらでもある。よりにもよって「噛んである鉛筆」なのか思う。しかし、そこに着眼することに、そのひねくれ方というか、なにか違うなと思わせものがある。

清水美江は句会吟よりも雑詠(創作吟)に重きをおき、「雑詠こそが生命だよ」というのが口癖であったらしい。十四字作家としても活躍した。〈落暉くるくる先駆者は黒い天馬で〉〈この妻の肉が欲しいか鳥が啼く〉〈はちの句に果てなき道をただひとり〉。

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