相子智恵
陽炎や角力(すまう)ゆさりと歩み出づ 是永 舜
陽炎や角力(すまう)ゆさりと歩み出づ 是永 舜
句集『間氷期』(2021.4 書肆山田)所載
「角力(すまう)」は競技の呼び名としてのそれではなく、所謂「おすもうさん」と呼ばれる力士を指す。陽炎の中、大きな力士が、あるいは力士たちが〈ゆさりと歩み出〉してくる。陽炎という季語によって、国技館のような建物の中で行われるリアルな相撲を思い浮かべることはなく、白昼夢のような一句に仕立て上げられている。
陽炎がゆらゆらと揺蕩う中、白く福々しい力士が全身の肉を〈ゆさり〉と揺らしながら歩き出す。清めの塩を大量に撒きながら歩み出しているのかもしれない。塩もゆらめいている。陽炎から力士が生まれ出てきたようにも思えて、全体がゆらゆらと揺れ、眩暈を起こしそうになる。なんとも面妖な一句である。
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