相子智恵
毛虫行く満艦飾の身をゆらし 石井那由太
毛虫行く満艦飾の身をゆらし 石井那由太
句集『七生』(2020.12 ふらんす堂)所載
「満艦飾」とは旧海軍の儀礼の一つで、祝日などの定められた日に、港に停泊中の艦艇の艦首から艦尾までの各帆柱を結んだ旗線に、信号旗をびっしり連ねて掲揚することをいう。転じて、洗濯物などを軒端いっぱいに並べて干すことや、極度に飾り立てることも言うと辞書にはある。ウィキペディアで外国の海軍の写真が見られるが、私は横浜で見た帆船を思い出した。軍艦以外では「満船飾」と呼ぶようである。
掲句、大きくて色も派手で、毛の長い毛虫なのだろう。毛に囲まれて浮遊しているようにも見える毛虫の身の感じが、なるほど、飾り立てられた帆柱と軍艦の船体のような感じに見えてくる。美しい身を揺らしながら、威風堂々と一匹の毛虫が進んでゆくのだ。
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