樋口由紀子
身の置き場なくて鴨居にぶら下がる
丸山進 (まるやま・すすむ) 1943~
「鴨居」とは引戸や襖、障子などを立て込むための開口部の上部に渡した、溝を付けた横木である。民家の座敷や居間に取り付けられている。ぶらさがり健康器と同じ高さぐらいだろうか。しかし、ぶらさがり健康器ように使用するところではない。ぶら下がったら、まずびっくりされ、そして笑われ、必ず叱られる。
座敷や居間でどんな話がされていたのだろうか。作者が直接関係しているのではなさそうである。しかし、話に割り込んでいけない空気感がある。たぶん、意見を求められても、どう答えていいのかわからない。なにもすることのなく、どうすることもできない。やさしい男性の哀愁がコミカルに表現されている。『アルバトロス』(風媒社刊 2005年)所収。
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