樋口由紀子
オルガンをぶかぶか弾いて夢の父
峯裕見子 (みね・ゆみこ) 1951~
娘にとって父親は複雑である。母親のように好き嫌いや善し悪しの感情で割り切れないものがある。自分の欠点や物腰や癖が呆れるほどに父と似ていたりもする。一体、父をどう思っていたのか、自分でも説明できないところがある。
現実より夢の方が感覚的にリアルで、質感や体感を通して、父をどのように見ていたかと思い知らされる。「オルガンをぶかぶか弾いて」は一般的な「父」のイメージからは逸脱している。「ぶかぶか」と弾く父よりも、「ぶかぶか」と聞こえてしまう娘の方にこだわりと屈折がありそうである。「ぶかぶか」のオノマトペを効果的に使って、もう会えない「父」を川柳の器に入れた。「峯裕見子オリジナルカレンダー2022」収録。
●
0 件のコメント:
コメントを投稿