樋口由紀子
百円で買った百円ほどの味
久保田紺 (くぼた・こん) 1959~2015
百円で買ったのだから、百円ほどの味はあたりまえで、別に二百円の味を期待したのでもなく、五十円の味でなくてよかったと安堵したわけでもない。感情はまったく入っていない。「ほど」に社会を見る姿勢が現れていて、「ほど」で世の中のすべてを埋めている。
人生のすべてはこういうものだということをすでに知っている。意味の了解性に向かいながら、アイロニカルなまなざしを感じる。あっさりとした語り口に諦念と寂寥が潜ませ、今の時代を生きている気分を表現している。『大阪のかたち』(川柳カード叢書 2015年刊)所収。
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