2024年1月5日金曜日

●金曜日の川柳〔湊圭伍〕西原天気



西原天気

※樋口由紀子さんオヤスミにつき代打。



サブリミナルみたらし団子  湊圭伍

サブリミナル効果が一時期やたらと世間の話題にのぼった。通俗解釈・通俗例示なら、意識できないくらい短い時間、ある映像が、見ている動画、例えばコマーシャルフィルムや番組に繰り返し差し挟まれる。その結果、知らず知らずのうちに特定のメッセージが脳に刷り込まれる。みたいな?

こわい。

暗示って言っていいの? よくわからない。けど、ともかく、なにを見せられているのかわからない。というところが、こわい。ような気がする。

けれども、それってほんとに怖いことなのだろうか。何を刷り込まれようが、いまさら、という感じもある。すでに、たくさんのサブリミナルな刺激を受けてしまったような気もしている。現代人だから。

それに、この句によると、閾値以下の刺激として私(たち)に与えられているのは「みたらし団子」だという。

みたらし団子に、個人的にまったく興味がなく、好きでもないが、みたらし団子なら、これまでのものすべてを上書きしてくれてもいい。こわくない。結果、好きでもなかったみたらし団子を好きになったとしても。

ところで、このところ、五七五に関する仕事が続いている(大晦日も三が日も、ずっとそれ)せいか、掲句のような音数の塊を見ると、妙に爽快。

爽快なのだけれど、とりあえず《ああサブリミナルみたらし団子かな》と17音(ああさぶり/みなるみたらし/だんごかな)にしてみたり、《サブリミナル釜揚饂飩》と代替してみたり。で、やっぱり、もとの13音のほうが気持ちがいいし、みたらし団子のほうが滋味深い。

かくして、しばらくは、みたらし団子が頭から離れないのだろう(もう一度言うが、好きじゃない。あまじょっぱくて、にちゃにちゃして、どちらかといえば、嫌いな食べ物)。

掲句は『川柳木馬』第178号(2023年12月)より。

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