2024年1月15日月曜日

●月曜日の一句〔浅川芳直〕相子智恵



相子智恵






雪となる夜景の奥の雪の山  浅川芳直

句集『夜景の奥』(2023.12 東京四季出版)所収

街の灯りが瞬き、そこに雪がちらちらと降ってきて、瞬きが一層にぎやかに感じられてくる。そして夜景の背後には、街を囲むように雪山が静かに座している。雪がなければ夜空よりも暗いはずの山が、白くふうわりと明るい。沈静しているような、浮き立つような、不思議な叙情のある光景だ。

初雪のこぼれくる夜の広さかな

という句もあって、この雪の句も好きだ。初雪に気づいて見上げた夜空。まだ続く雪は少なく、雪雲もそれほど広がってはいないのかもしれない。空の広さではなくて、〈夜の広さ〉としたことで、瞬間を切り取った景の中に、時間的な広がりも感じられてくるし、吸い込まれそうにもなる。

カフェオレの皺さつと混ぜ雪くるか

去年の雪ざつとこぼして神樹あり

他にも佳句の多い句集だが、今の季節に読んだからか、雪の佳句が特に心に残った。

 

0 件のコメント: