相子智恵
輪郭のぼやけてきたる氷菓かな 鈴木総史
句集『氷湖いま』(2024.3 ふらんす堂)所収
氷菓の、まだ詠まれていないであろう一面を発見した句。袋から出したばかりの氷菓(アイスキャンディー)には、当然だがはっきりとした輪郭がある。それが舐めたりして溶けていくうちに、ぼやけてきたというのだ。透明感のある氷菓だからこそ、〈ぼやけてきたる〉の滲む感じに納得感があり、なるほどと思う。
氷湖いま雪のさざなみ立ちにけり
白鳥のあかるさに湖暮れきらず
今は北海道に住む作者。〈氷湖いま〉は、水の漣が生まれることのない凍てついた冬の湖の表面に、今は雪が吹かれて漣立っている。〈白鳥の〉は、暮れ残る白鳥によって、湖がぼうっと明るい。どちらも水辺の微妙な光の美しさを捉えた。
氷菓の句も景色のスケールこそ違うものの、小さな世界の中に透明感があって、水と光の美しさがあると思った。
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