樋口由紀子
一斉に月に吠えたか一夜干し
義積喜美子
萩原朔太郎の詩集『月に吠える』がある。まさに換骨奪胎。うまく取り入れて、自分のものを作りだしている。なによりも「一夜干し」がいい。一夜干しは一晩で一度に干す方法で、数日間かけてじっくり干す方法の天日干しとは異なる。烏賊か鰺の干物だろうか。一斉に数百の烏賊や鰺があたかも月に吠えているかのよう天に向く。荘厳で吸い込まれていきそうな景を描出している。
「月に吠える」は生命力のある力強い言葉である。私は富岡多恵子が「月に吠える男は詩人であっても、女が同じことをすれば狂気ときめつけられた」と書いた一文をいつも思い出す。
●
0 件のコメント:
コメントを投稿