西原天気
※相子智恵さんオヤスミにつき代打。
※相子智恵さんオヤスミにつき代打。
蜘蛛の巣の中のはちきれさうな雲 黒岩徳将
つまりは、蜘蛛の巣越しの積乱雲。これ、12音。散文的には12音で済む事象が、17音の俳句になる。音数的な余分・余裕には、《はちきれさう》という観察者の認識というか印象が盛り込まれた。ここに「気分」が出る。夏の気分。その日そのときの気分。
《の中に》とうやや強引な措辞(中じゃないしね)は、現実の遠近を無効にして、雲が蜘蛛の巣にとらわれて、むくむくと蜘蛛の巣からはみ出そうな勢い。ここにも「気分」がある。
蜘蛛から雲へ、同音異義の遊びは、この句の主眼ではないが、それも愉しい。読者が作者と軽く微笑み合える感じ。
掲句は黒岩徳将句集『渦』(2024年5月/港の人)より。
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