樋口由紀子
垂直に沈む艦(ふね)までとどかぬ 手
宮田あきら (みやた・あきら) 1923~1986
「艦」だから、戦いに用いる船であろう。やぐらかどこかの上から見おろす大きな軍艦。その軍艦が沈む。戦争映画などで船首を垂直にたてて、沈む軍艦を見たことがある。ぐんぐんと瞬時に沈没する。
一字空けのあとの「手」が意味するものは何か。人間の手でも、神の手でも、沈みはじめると、それはもうどうすることもできない。「手」の示唆するものはあまりにも多い。戦争は始まってしまったら、誰にもどうすることもできない。
宮田あきら小学校の頃から句会に出席し、甫三・豊次・あきらの宮田三兄弟として、京都の川柳界で活躍した。生涯、川柳革新運動に挺身した。〈三十年の反旗を巻けば 孕む眼球〉〈テレビ受像 マラソンランナー掌を挙げて落下(おち)〉
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