樋口由紀子
こんにちわさよならを美しくいう少女
岸本吟一 (きしもと・ぎんいち) 1920~2007
秋晴れが続く。こんな日にこんな少女と出会ったら、こころがさらに晴れわたる。「美しくいう」がなんともよい。
あいさつをしなくなったと思う。一昔前まで道で人に出会うと挨拶をしたものである。そんなに親しくなくても、知らない人であっても、あいさつを交わした。「こんにちは」「さよなら」、きれいな日本語である。イントネーションもよく、やわらかく、こころが和む。人は人と触れ合うことによって育っていく。人を豊かにするのは人である。
吟一は日本最大の結社「番傘」を築いた岸本水府の長男。彼自身も昭和53年から57年まで番傘主幹に就任している。また、映画のシナリオライターであり、「東京フイルム」の代表者として、映画制作を行っていた。そのせいでもないが、掲句からも映像が浮かぶ。少女はきっと可憐でかわいいだろう。
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