2013年11月26日火曜日

〔おんつぼ48〕ロナルド・ジェンキーズ 小津夜景

おんつぼ48

ロナルド・ジェンキーズ
Ronald Jenkees


小津夜景

おんつぼ=音楽のツボ


私は、あまり音楽を知らない。Soundcloud や bandcampが生まれてから、ミュージシャンがレーベルというものに無関心になり、私のような素人には新しい音楽がますます探しづらくなった。そんな中、実弟から教えてもらったのがロナルド・ジェンキーズ。三年ほど前のこと。

おんつぼ的には「Guitar Sound」が抜群。



この曲の面白さをかいつまんで言うと、まず一番目にジャンルの折衷ぶり。一見インテリっぽい感じのテクノなのに、ギターで弾いてみると実は思いっきりガンズ&ローゼズだった、といった仕掛け(?)が、ほほえましい、というか、胸にぐっとくる。さらにピアノで弾いた場合は完全なスティーヴ・ライヒになるところも、何か、変身系のオモチャみたいで愉しい。

フルーティループスを使って、1〜2小節のループをずっと鳴らしながら音を足したり減らしたりしつつ、そのループを少しずつ増やしてゆくといった作曲法は、この時期わりと流行してしたようだ。その中でも彼は、ダントツの折衷的才能でもって、素敵なスコア・デザインをする人。

で、面白さの二番目は、彼の使っている「音」がとても新しいこと。この人はPC98やメガドライブ世代特有の、音響に対する一種「野良っぽい」出自&感性を、ミュージック・シーンにまるごとすっきり移植しえた数少ない一人なのではないでしょうか。

Disorganized Fun とか



Throwing Fire とか



わかりやすいのを挙げれば、こんな感じ。

ヘッドフォンをして一人でアルバムを聴いていると、どんな「使えない」ひどい音も他の音と等価なデータベースとして扱われているのがわかる。彼のそんな(奇妙な非人情ともいえる)ヒューマニズムにはたまらなくアートを感じるし、またそれとは逆に、もともとのテクノというのは、音に対するこの手のユーモアや粗暴さのない、つまりは(趣味と選別の良さを披露する)ナイーヴな教条主義だったんだなーと(もちろん、それは当時から、隠された秘密でもなんでもなかったのだけれど)、ちょっと思ったりもする。


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