2020年7月13日月曜日
●月曜日の一句〔なつはづき〕相子智恵
相子智恵
梅雨曇りキリンのような恋人と なつはづき
句集『ぴったりの箱』(2020.6 朔出版)所載
〈キリンのような恋人〉は、背の高い人なのだろう。首もすっと長い。スマートだけれど肉食ではなくて草食。よく見るとちょっと眠そうな目だし、高い木の葉を食べてずっと反芻しているような、のんびりとした感じの人。そんな恋人はなんだか落ち着くし、愛嬌があっていい。
一緒に歩いていて〈キリンのような恋人〉を見上げれば、その先には〈梅雨曇り〉の一面灰色の空が見える。これが抜けるような夏の青空でも、ドラマチックな夕焼けでも、恋のキラキラみたいな星空でもないところがいい。どんよりとした〈梅雨曇り〉は鬱陶しいけれど、このはっきりとしない〈梅雨曇り〉からくる日常感が好きだ。晴れの日もあれば嵐の日もあるけれど、人生はだいたい曇りの日なのである。
〈キリンのような〉と言われると、やっぱりあの黄色が思われてきて(もちろん黄色い服を着ているわけではないけれど)その人のまわりだけ、曇天の重苦しい空気がぽっと明るく緩む気がする。
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