樋口由紀子
いい加減にしろとは意味がわからない
楢崎進弘 (ならざき・のぶひろ) 1942~
「いい加減」ならよい程度、適度という意味だが、日常よく使われる「いい加減にしろ」の「いい加減」はあまりよくない加減の意味で、確かに意味がわからない。「いい加減にしろ」と相手に言うこともあり、「いい加減にしろ」と言われて、あっと反省することもあるが、どこがいい加減なのかと思うこともあり、確かに意味がわからない。皮肉のきいた、嫌味のある一句である。
誰もが思い、一度は言いたくなる。しかし、読み飛ばしてしまいそうな、つぶやきも川柳にする。それにしてもあまりにもストレートで、表現に工夫がなく、余白も余韻もまったくなく、言い切ってしまっている。しかし、そこがいい。意図的に、理屈や説明やあえて避けない恣意的な演出だろう。それはまちがいなく川柳ならではの魅力である。「逸」(42号 2020年刊)収録。
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