樋口由紀子
あばら骨の曲がり具合がマティス色
夏草ふぶき (なつくさ・ふぶき)
あばら骨をレントゲン写真で見せてもらうときれいなカーブで整然としていてうっとりとする。このような身体に支えられているのだと誇らしくもなる。
「あばら骨の曲がり具合」とはあばら骨の曲線のようなだが、「曲がり具合」とは少しニュアンスが異なる。マティスは「色彩の魔術師」と言われ、その色遣いは独特で、鮮明である。しかし、「マティス色」は具体的にわからない。
それぞれの名詞を助詞で繋げて一句が構成され、周辺を緻密に埋めている。しかし、「の」と「が」の助詞は意味をつないで、句意をあきらかにしているのではない。「の」と「が」で空間を作り、どんどん意味から遠ざかり、より抽象度が増している。体感なのだろうか。独特の雰囲気と感覚を浮かびあがらせている。「おかじょうき」(2020年刊)収録。
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