樋口由紀子
雨あがる雨はいつでもあたらしい
妹尾凛 (せのお・りん) 1958~
雨の見せ方がうまい。雨があがると空気は一掃され、なにもかもがさわやかになる。しかし、掲句は雨あがりの爽快さを書いているのではなく、「雨」を書いている。さっきまで降っていた雨も、これからまた降り出す雨も、気づかなかったけれどあたらしい。そして、雨をあたらしいという視点で捉えていることがあたらしい。
いままでは思いつきさえしなかった「あたらしい」が雨ともに広がり、新鮮に立ち上がる。これからは雨の日の印象はずいぶん変わってくる。彼女はずっと以前からそう感じていたのだろう。なんでもないように、さらりと書かれているが、そこにはこの世をあるがままに受け止めている清潔な姿勢が見える。『Ring』(2020年刊)所収。
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