樋口由紀子
「ははーんさては」が回る山手線
きゅういち 1959~
春休みに孫娘のお供で山手線に乗った。新大久保、原宿、渋谷、目黒、秋葉原など九つの駅を乗降し、ぐるぐる回った。乗車中はただ前へ進んでいるので、回っている感覚はない。
一周回ると振り出しの駅に戻る。「ははーんさては」と路線図を見て知る。しかし、掲句は「ははーんさては」が回るという。音なのか、意味なのか。言葉に定着できない感覚がぽかりと浮かぶ。理性とは違う目の付け所がある。「ははーんさては」を十分理解できないけれど、そこにすっとぼけた感じの、疑い深い、懐かしさがある。その言葉が現場を捉える。
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