樋口由紀子
イグアナが降る日は大きめの傘を
真島久美子 (ましま・くみこ) 1973~
イグアナは砂漠や熱帯雨林に生息するもので、空に居ないし、まして降ってはこない。それに全長2メートルぐらいあるものもあり、降ってこられたら、それこそたいへんである。大きめの傘ぐらいではふせぎようがない。人を食ったような川柳である。
「イグアナが降る日は」だから、ときたまあるのか。「傘を」だから、誰かに言っているのか。出掛ける家族かあるいは自分になのか。今日は気をつけるようにと助言している。が、それほど深刻でもなさそうである。なんなら傘で弾け返すこともする。「イグアナが降る」と「大きめの傘」の虚と実の関係性に落差をつけ、アレンジする。日常をズラして、裏切っていく。一句全体が比喩になっているのだろう。『いちご畑とペニー・レイン』(満点の星 2023年刊)所収。
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