樋口由紀子
父役はとろろこんぶをつけて出る
湊圭伍 (みなと・けいご) 1973~
なぜ、そういう事態になったのかというよりは、ここから物語は始まる。父役がとろろこんぶをわざわざつけて出てきた。それは頭か、顔か、肩か、足か、どこかにあのふわっとして、べちゃとした、目立たないようだが、しっかり存在をアピールするとろろこんぶをつけている。
ありえなくはないが、一風変わった登場の仕方である。視点をズラす。そのちょっとしたズレから、歪みから、だんだんとゆっくりと、普通のようでいて、けったいな日常へと連れ込まれる。おやっ、えっ、と思っているうちに舞台はとんとんと楽しく進行し、もう一つの世界と繋がっていく。
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