2024年4月26日金曜日

●金曜日の川柳〔渡辺和尾〕樋口由紀子



樋口由紀子





僕のてのひらでひとのてのひらかな

渡辺和尾(わたなべ・かずお)1940~2021

自分のてのひらを見て、このてのひらは自分のためのてのひらであり、ひととつながり、ひとのためにも使う、やわらかいてのひらであるとつぶやいているのだろうか。

「僕」だけが漢字であとはすべてひらがな表記である。<僕の掌で人の掌かな>とは別の様相を呈する。ひらがなの並びには表情がある。ただ、てのひらをみつめているだけで、そこに理由や理屈を嵌め込む必要ないのかもしれない。ひらがながころころところがりながらひろがり、ひらがなでかたちづくられた世界が顔を出す。その素直さを感受する。『回歸』(2003年刊 川柳みどり会)所収。

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