樋口由紀子
僕のてのひらでひとのてのひらかな
渡辺和尾(わたなべ・かずお)1940~2021
自分のてのひらを見て、このてのひらは自分のためのてのひらであり、ひととつながり、ひとのためにも使う、やわらかいてのひらであるとつぶやいているのだろうか。
「僕」だけが漢字であとはすべてひらがな表記である。<僕の掌で人の掌かな>とは別の様相を呈する。ひらがなの並びには表情がある。ただ、てのひらをみつめているだけで、そこに理由や理屈を嵌め込む必要ないのかもしれない。ひらがながころころところがりながらひろがり、ひらがなでかたちづくられた世界が顔を出す。その素直さを感受する。『回歸』(2003年刊 川柳みどり会)所収。
●
0 件のコメント:
コメントを投稿