西原天気
※相子智恵さんオヤスミにつき代打。
※相子智恵さんオヤスミにつき代打。
何か言ふ老人の歯を網戸越し 杉山久子
フィルターがかかって、入れ歯か自分の歯か、その歯の白だけがはっきりと見える。
老人の呂律だからか、網戸が邪魔するのか、聴覚にもフィルターがかかって、何を言っているのかまではわからない。
「歯」にフォーカスされたこの老人像、老人を含む光景に、どんな印象を持つか。私には、ちょっと気味の悪い、夢魔のような光景に映るが、このへんは、読者によってさまざまだろう。この種のことまで、句が明示するわけではないので(これは俳句のもつ美徳。ただ、出来事や光景が提示される美徳)。
掲句は杉山久子句集『栞』(2023年9月/朔出版)より。
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