樋口由紀子
大夕焼耳をお返しいたします
加藤久子(かとう・ひさこ)1939~
大夕焼の鮮やかさが目に見えてくるようである。自然の偉大さ、美しさに感動し、胸いっぱいになって、咄嗟に思ったのだろう。「お返しいたします」ということはもともと自分のものではなく、借りていたという意識があったのだろう。大夕焼に対しての究極の敬意である。
その心の有りように驚く。それは自然の中で生かされているという思いからだろう。荘厳な景を目にしての奇妙で不思議な感覚である。こちらからあちらへと心身を寄せていき、「お返しいたします」ときっぱりと言い切る。美意識と感受性で作者固有の世界と空間を創り上げている。「触光」(80号 2023年刊)収録。
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