西原天気
※樋口由紀子さんオヤスミにつき代打。
「山本リンダ」 川合大祐
川合大祐『リバー・ワールド』(2021年4月/書肆侃侃房)は、人名がとても多い。
オスカー・ワイルド、ジャンボ鶴田、ロダン、フーディーニ、切断されたバとカボン、チャップリン、タイガーマスク、偽ドリフ、ベラ・ルゴシ、アダム・スミス、チップ/ディール、サマセット・モーム、ディズニー、紀貫之、研ナオコ、いとうせいこう、宗兄弟、房公部安、のび太、六人の馬場、ダーウィン、タモリ、永井豪、武田鉄矢、長渕、安達祐実、志田未来、長嶋茂雄、マリック、タモリ、マルクス、イチロー、ゴドー、緑川一族、スネークマン、ブラウン神父、カーネル・サンダース、サルトル、老グレーテル、サッチャー、フック船長、宇多田ヒカル、実相寺昭雄、ヴェルヌ、馬場、吉永小百合、寺山、ガッツ石松、イーストウッド、ルイージ、たけし、クララ、与謝野晶子、ブリトニー・スピアーズ、ジャガー横田、手塚治虫、日高のり子、エスパー五郎、シャア、森進一、志賀直哉、吉宗、愛野美奈子、伊藤整、椎名桜子、コメットさん、茉奈佳奈、海野十三、ラカン、ジョン・ウェイン、ハンフリー・ボガート、渋谷さん、寂聴、アトム、藤原氏、ちびくろサンボ、徳川家、藤原氏、リカ、ドナルドダック、薫子、カリガリ博士、こんどー、ぐりとぐら、辻加護、志村、佐藤蛾次郎。
架空のキャラクターや芸名、誰を指すのか不明の固有名詞なども気にせず混入させて拾いました。壮観です。
で、です。人名が川柳(や俳句)に出現すると、びっくりすることが多い。とりわけ川合大祐の句がそうなのですが、思ってもみない脈絡のなかに突然現れるので。
なおかつ、みなが知っている人たちは、まずまず膨大な情報(ウィキペディア数画面ぶん)を携えて、あるいは引き摺っている。
だから(ここで読者に不親切な論理の飛躍)、句における人名とは、事件のようなものです。
そこで、掲句。句です。章タイトルとかではありません。ただ単に「山本リンダ」とは、まさに事件の最たるもので、目にする読者は不安とも歓喜とも驚嘆とも絶望とも知れぬ感情が「どうにもとまらない」。ほとほと「こまっちゃうナ」であります。
でも、まあ、『リバー・ワールド』全368頁という句集自体が、さらにいえば川合大祐の全作品が「事件性」に満ちている。そのことに思いを到らせつつ、《カギ括弧付きの山本リンダかな》と五七五定型・切字にパラフレーズする無粋で、この記事を結びます。
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