樋口由紀子
極めて右に乳房が寄っている困る
酒井かがり(さかい・かがり)1958~
つい先日の句会に出された一句である。「極めて右に」にどきりとした。まさに今である。しかし、鮮やかに切り取っているのではない。日常における実感を不道徳っぽい書きぶりで、句材を自分の身体に、それもジェンダー性の強い乳房を持ってきている。
「極右(ごくみぎ)に」と上五にすればすんなりいくものを、わざわざ「極めて右に」と散文的な説明を加える。一方、下五は「いる困る」と「る」を重ね、もたもたともどかしくし、「いて困る」という説明を回避する。虚であり実である感覚をスローガンにいかないように、他人に迷惑がかからないように「困る」と着地した。確かに困る。
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