2011年1月10日月曜日

●つんつん 中嶋憲武

つんつん  中嶋憲武


しだらなくて本当に厭んなっちゃう。こんなカタチで元旦の朝を迎えるなんて。田舎には帰らなかった。両親はきっと大学に入って浮かれてんじゃないのと思ってるだろう。こんな息子をお許し下さい。ミチコ先輩はまだ惰眠の真っ最中。ミチコ先輩のとがった乳房にそっと手を置いても目を開けない。ふかふかの蒲団はいい匂いがする。僕の下宿の黴くさい薄っぺらの蒲団とは大いに違う。薄っぺらいのは干さないからだ。ああ、ここは天国。日の匂いだ。四月からは離ればなれになってしまうかもしれない。ミチコ先輩は地元の小さな信用金庫に就職が決まっている。捨てられなければ遠距離恋愛もアリだ。

乳房に手を置いていると僕の太郎が元気になってきた。太郎をミチコ先輩の太股につんつんしてみる。眠っている。つんつんを繰り返した。ミチコ先輩は目を閉じたまま「ばか」と言った。猫のチーが蒲団の裾の方で、みひゃーんと鳴いた。

大旦いまさら莫迦と言はれても   さいばら天気


掲句は『はがきハイク』第3号(2011年1月)より

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