2016年6月5日日曜日

【裏・真説温泉あんま芸者】 句集の読み方 その2・帯〔続〕 西原天気

【裏・真説温泉あんま芸者】
句集の読み方 その2・帯〔続〕

西原天気



さて、続きです。

前回(昨日)、自分の句集『けむり』の帯に八田木枯さんのお言葉を配したことを紹介しましたが、これ、名のある人の推薦を帯に刷るパターンです。

北大路翼『天使の涎』(2015年4月/邑書林)の帯A面=会田誠も、そのかたち。俳句業界の外の著名人に依頼した点、この句集のコンセプト〔*1〕とよく合致しています。



金原まさ子『カルナヴァル』(2013年2月/草思社/装幀Malpu Design)は有名俳人の推薦文。



無記名の惹句というパターンもあります。編集がつくりあげたコピライトを配した斉田仁『異熟』(2013年2月/西田書店/装幀間村俊一)。



シリーズ刊行だと、それを伝える文言が入ってきたりもします。下写真は寺澤一雄『虎刈り』(1988年/牧羊社/装幀山崎登)。



一句抜いて大書というかたちも少なくありません(最多かも)。下写真は中村遥『海岳』(2015年1月/本阿弥書店/装幀花山周子)。


帯の形状から、句が横組になるのは致し方のないところでしょうか。それを避け、縦組・改行で処理した帯もあります。下写真の村上鞆彦『遅日の岸』(2015年4月/ふらんす堂/装幀間村俊一)。


久保純夫『日本文化私観』(2015年10月/飯塚書店/装幀片岡忠彦)は著者本人の「あとがき」から抜粋。



主宰の推薦文を入れるかたちはかなりの頻度。下写真は宮本佳世乃『鳥飛ぶ仕組み』(2012年12月/現代俳句協会/装幀小島真樹)。



上田貴美子『暦還り』(2016年4月/角川書店/装幀大友洋)は、写真+一句+主宰の一文抜粋。



変わったところでは、文言ナシ・写真という堀込学『午後の円盤』(2013年7月/鬣の会)。


ただし、これ、いっけん帯に見えて、じつはカバーへの印刷(帯とは呼べませんね。でも、だって、見た感じは帯なんだもん!)。近年、このかたちも出てきました。

岸本尚毅『感謝』(2009年9月/ふらんす堂/装幀柚子谷七月子)は、帯の部品(惹句やら自選15句やら)を備えながら、カバーへの印刷。最初、指でさわって、びっくりしましたよ。




ほかにもいろいろあるのですが、あとは、読者諸氏が自宅や書店でお楽しみください。


最後に。

帯がないのも、それはそれですっきりして、気持ちがいいね、ってことで。



中山宙虫『虫図鑑』(2016年4月/西田書店/装幀笠井亞子)
佐藤文香『君に目があり見開かれ』(2014年11月/港の人/装幀吉岡秀典)
髙柳克彦『寒林』(2016年5月/ふらんす堂/装幀和兎)



〔*1〕句集のコンセプトとは例えば、北大路翼:2016田中裕明賞受賞の言葉:「一般読者を意識するやうになつたのは、「屍派」を立ち上げてからである。飲み屋で始めた句会は三人になり四人になり十人になつた。いまではSNSでつながつたメンバーも含めると全国で百人以上になる。みな屍派がきつかけで俳句を始めた人たちだ。 」
http://furansudo.com/award/07/jyusyou.html

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